10月15日、80億分の1(1 in 8 Billion) というサイトに出会った。
ボタンを押すと、世界の80億人のうちの誰か一人として生まれる。
どの国に、どんな家に生まれるかは、統計にもとづく、くじ引きのように。そこから、その人の一生が流れていく。
遊んで、しばらく手が止まった。
生まれる場所は、選べない
80億分の1 がすごいのは、数字が「一人の人生」になるところだと思う。
ニュースで「乳幼児の死亡率が◯%」と聞いても、正直、ぴんとこない。でも、自分が生まれた先で、その一生が5歳で終わる。それを目の前で見ると、数字の重さが変わる。
しかも、それを茶化さない。亡くなる場面も、静かに、記録として出てくる。
どこに生まれるかは、自分では選べなかった。僕も、あなたも。
当たり前のことなのに、ちゃんと考えたことがなかった。
同じ年に、日本で生まれた誰か
で、思った。
これを「同じ年に日本で生まれた、同級生」でやったら、もっと自分のこととして感じられるんじゃないか。
同じ年に生まれても、生まれた土地も、家も、性別も違う。進学するかどうか、結婚するかどうか、どんな仕事に就くか。同級生の数だけ、一生がある。
それで作ったのが、これ。

生まれ年を入れると、その年に日本で生まれた赤ちゃんの「誰か一人」になって、一生を生き直す。最初の画面には、こう書いた。
「生まれる土地も、家も、性別も、自分では選べません。あなたが、そうだったように。」
100年前なら、4人に1人が5歳を迎えられなかった
作りながら、いちばん考えさせられたのが、ここ。
サイトでは、生まれた年ごとに「5歳までに亡くなる割合」と「平均寿命」を使ってる。並べると、こうなる。
| 生まれた年 | 5歳までに亡くなる割合 | 平均寿命 |
|---|---|---|
| 1920年(大正) | 約26% | 約43歳 |
| 1950年(昭和) | 約8.5% | 約61歳 |
| 2026年(令和) | 約0.2% | 約84歳 |
サイトで使っている値。1946年以前は記録にもとづく推計
祖父母の世代が生まれたころは、4人に1人が5歳の誕生日を迎えられなかった。いまは、400人に1人もいない。
なので、遊び終わると、最後に「いまの日本で」という一言が出るようにした。

1952年に生まれた同級生なら、こう。
「この同級生が生まれた1952年から2026年のあいだに、日本では5歳までに亡くなる子は約8%から約0.2%に、平均寿命は63歳から84歳になりました。あなたの今日は、その積み重ねの上にあります。」
いまの日本に生まれたことは、当たり前じゃなかった。
僕がいちばん伝えたかったのは、これ。
もっと昔にも、生まれてみられる
一度、自分の生まれ年の人生を最後まで生きると、西暦500年から1899年にも生まれられるようになる。平安の都にも、江戸の村にも。
昔の時代は、5歳を越えられるかどうかが、まず最初の山になる。
元寇や関ヶ原、黒船、関東大震災のような歴史のできごとでは、いったん止まって、そのときあなたが何歳で、どこに住んでいたかを出す。
このときの絵は、当時の資料を使った。蒙古襲来絵詞や関ヶ原合戦屏風、関東大震災の写真など、パブリックドメインの歴史資料7点。資料名と所蔵、出典を、絵ごとに添えてる。

最初は、生成AIで描いた絵を置いてた。でも、実際に生きた人たちの出来事を、それっぽい絵で見せるのは違うと思って、やめた。当時の資料がないできごとは、文章だけにしてる。
人物の絵とサムネは生成AIで作った。これはサイトの「このサイトについて」と、絵の下に書いてある。
数字だけは、嘘にしたくなかった
統計を一人の人生に当てはめるサイトなので、数字がずれたら、全部がうそになる。
人口、出生数、平均寿命、災害や疫病で亡くなった人の数は、公開の前に出典と一つずつ照らし合わせた。仕事と年収は、賃金構造基本統計調査 と国税庁の民間給与実態統計調査(時系列) から、その年その年の円で出してる。
昔の時代ほど、数字は研究者の推計で、幅が大きい。そこは画面に「統計にもとづく」「大まかな推計」と、段階のラベルを出してる。

作者さんに、お礼を伝えた
このサイトは、80億分の1 がなかったら生まれてない。
なので、運営者さんにメールを送った。着想をもらったことのお礼と、サイトの中に名前とリンクを載せていいかどうか。
その夜のうちに、あたたかい返事が来た。名前とリンクを載せることも、快く了解してもらえた。
いまは「このサイトについて」に、着想を得た作品として載せてる。
80億分の1 は世界、あなたの同級生は日本の同級生。入口は違うけど、感じてほしいことは、たぶん同じだと思ってる。
自分の生まれ年を、入れてみてほしい
できれば、自分の生まれ年で。
それから、親や祖父母の生まれ年でも。自分の子どもの生まれ年でも。
同じ年に生まれた誰かの一生を見たあと、自分の今日がちょっと違って見えたら、うれしい。
まだβ版です。気になったところがあれば、教えてください。

