10月19日の作業を、あとで数えてみた。
84人日。
物差しは「生成AIを使わない一般的な社員が同じものを作ったら、何時間かかるか」。自分で決めた単価表で、毎朝前の日の分を数えてグラフにつけてる。10月19日は 672時間ぶんで、つけはじめてからいちばん多い日だった。

ただ、数字は目安。画像は1枚1時間で数えるので、バンドの動画用の画像165枚だけで165時間になる。大きく出やすいところは、ちゃんとある。
やってたのは、お客さんのアプリの直し、自社アプリ FolderOS の新しい版、漫画「行政バグります!」の作画100コマ、バンド「灰華 -HAIKA-」の画像と曲、それと自作のRPG。AI を何本も並べて、1日で回した。
この記事で書きたいのは、その日に何に疲れたか。それと、AI に任せられる仕事を増やして、そのぶん「決めないと始まらない仕事」に頭を使うやり方。
疲れたのは、漫画じゃなかった
夜、ぐったりした。
ただ、嫌な疲れじゃなかった。マラソンを走り終えたあとみたいな、やりきった疲れ。
で、何に疲れたのかを考えてみた。
漫画じゃない。100コマ描いてても、僕はほとんど何もしてない。
疲れたのは、RPG のほう。それと、歌詞と、FolderOS をこの先どう売るか。
どれも、正解がない。
仕事は、2つに分かれてた
ひとつは、やることが決まってる仕事。 漫画の作画とか、仕様が決まってるアプリの直しとか。何を作るか、どこまでやればいいか、何がダメかが先に決まってる。AI に渡せば進むし、僕の頭もあまり使わない。
もうひとつは、決めないと始まらない仕事。 ゲームのこの場面で何を見せるか。この歌詞でいいのか。FolderOS を誰に売るか。答えがないので、僕が考えて決めるしかない。
疲れてたのは、ぜんぶ後ろのほうだった。

もっと言うと、AI が速くなるほど、ここが詰まる。AI はどんどん返してくる。でも、それがいいのかダメなのかを決めるのは僕。返ってくる量が増えるほど、決める回数も増える。
AI にたくさん振れば進む、というわけじゃなかった。
漫画も、最初は「決める仕事」だった
じゃあ、漫画はなんで楽なのか。
最初から楽だったわけじゃない。はじめは1コマごとに悩んでた。キャラの顔が回ごとにずれる。セリフが吹き出しからはみ出す。どこまで描けば出していいのかも、わからない。
なので、AI が描いた絵を、別の AI に「編集者」として採点させることにした。その採点の項目が、これ。
| 項目 | 点 | 見ていること |
|---|---|---|
| 人物の同一性 | 25 | 主要な4人が、設定画と同じ顔・髪型・服か |
| コマとセリフの収まり | 20 | セリフが全部入ってるか。文字や顔が枠で切れてないか |
| 絵柄 | 15 | 白黒の少年漫画の仕上げか。写真っぽくなってないか |
| セリフと文字 | 15 | 吹き出しの字が、台本と一字一句同じか |
| 設定と小物 | 15 | 窓のない地下の部屋に窓がない、指の数が合う、など |
| 仕上がりのそろい | 10 | ページの中で、線の太さや描き込みがばらついてないか |
で、80点を超えたら出していい。
この6つは、最初からあったわけじゃない。ぜんぶ、僕が一度ひっかかったところ。
キャラの顔がずれて、毎回「これ誰?」となったから、「同一性」がいちばん重い。セリフが見切れてたのに気づいて、「収まり」を足した。最初は甘くて、直す前の話にも75点とか80点が付いてた。なので「週刊連載の基準で、甘くつけない」「迷ったら低いほう」と書き足した。
10月19日に作画した17話は、1回目が66点で「出せない」。30コマ描き直して、2回目で85点になった。

前に書いた記事の16話も、57点から81点になってる。
いまは、決めることがほとんど残ってない。なので、10月19日も100コマ進んだ。今日も、行政バグりますはもう2本書いてる。

これって、作業を自動にしたというより、僕が決めたことを、何度でも使える形にしたんだと思う。一回決めたら、次からは決めなくていい。
自分の仕事でやるなら
漫画じゃなくても、同じやり方はできると思う。僕がやった順番は、こう。
1. 疲れた仕事と、疲れなかった仕事を分ける
1日の終わりに、どれで頭を使ったかを書き出す。時間じゃなくて、疲れたかどうかで分ける。
2. 疲れた仕事の中から、同じ判断をくり返してるものを探す
毎回ちがう答えが要るものは、そのまま自分でやる。毎回「これでいいかな」と同じ目で見てるものが、型にできる候補。漫画なら「顔がずれてないか」を毎回見てた。
3. その判断を、点数のついた項目にして書き出す
「いい感じか」ではなく、「設定画と同じ顔か」くらいまで具体にする。何点なら出していいかも決める。たとえば提案書なら、「お客さんの言葉で書いてあるか」「数字に出典があるか」「最初のページで結論がわかるか」みたいに。
4. AI に、作るほうと採点するほうを分けて渡す
作った AI に自分で採点させると、甘くなる。別の AI に「甘くつけないで」と頼む。点が届かなかったら、どこを直すかも書かせる。
※ この「作る AI と採点する AI を分ける」形は、専門用語では LLM-as-a-judge や evaluator-optimizer と呼ばれてるそう。AI で開発してる人には、わりと知られたやり方。
5. ひっかかったら、項目を足す
型は一回で完成しない。出したあとに「ここ違う」と思ったら、それを項目に足す。漫画の6項目も、そうやって増えた。
浮いた頭は、答えがないところに使う
全部を楽にしたいわけじゃない。マラソンも、距離を短くしたら楽しくなくなる。考えるのは、むしろ好きなほう。
なので、型にできるものはどんどん型にして、浮いた頭で、決めないと始まらない仕事をどんどん増やしていきたい。ゲームの次の章も、FolderOS をどう広げるかも、まだ答えがない。そこに使いたい。
84人日でいちばんうれしかったのも、数字じゃなかった。いままでなら1日じゃ無理だった数のことを、一人で前に進められた。そっちのほう。
ただ、やりきった疲れと、毎日続けられる量は別。84人日を毎日やるのがいいとは思ってない。
一回決めたことは、書き残して AI に渡す。空いた頭で、また新しく決める。AI を何本並べるかより、この回し方のほうが効くと思ってる。


