「あの人はセンスがいいよね」
仕事や日常の中で、私たちはつい、そんな言葉を口にします。デザインセンスが、ないと思っていた自分に対して、知人が進めてくれたこの書籍の感想を書きなぐります。
ファッション、デザイン、企画、会話の運び方まで、「センス」はまるで一部の人にだけ与えられた特別な才能のように語られがちです。僕もいままでそう思ってました。
しかし、もしその「センス」が、才能ではなく後から身につけられるスキルだとしたら?
そんな常識を覆す視点を提供してくれるのが、クリエイティブディレクター水野学氏の著書『センスは知識からはじまる』です。
本書を読み解くと、センスの正体と、それを誰もが磨き上げられる具体的な方法が見えてきます。
◆ センスの正体は「普通」を知ること
本書が提示する最も重要なメッセージは、「センスとは、特別なものではなく、膨大な知識の集積である」というものです。そして、その知識の土台となるのが「普通」を知ることだと説きます。
ここで言う「普通」とは、「平均的」や「没個性的」といった意味ではありません。むしろ、「その時代や分野における、価値判断の基準点」と捉えてました。
多くの人が「良い」と感じる共通の感覚、それが「普通」です。
センスが良い人とは、この「普通」という名のモノサシを正確に持っている人のこと。自分の主観的な好み(=自分の普通)と、世の中の客観的な基準(=世の中の普通)との距離感を正確に測れるからこそ、物事の良し悪しを的確に判断できるのです。
◆ なぜ「知識」がセンスに繋がるのか?
では、なぜ「普通」を知るために知識が必要なのでしょうか。
本書で語られる、音楽家の坂本龍一氏の例が非常に分かりやすいです。
例えば、私たちが「ビートルズが好きだ」と言うのと、坂本龍一氏が「ビートルズが好きだ」と言うのとでは、同じ言葉でもその裏にある解像度が全く異なります。
坂本氏は、音楽史、和声、楽器の特性といった膨大な知識を持っています。その知識があるからこそ、「ビートルズが当時の音楽シーンにおいて、なぜ、どのように革新的だったのか」を多角的に分析し、言語化することができます。彼の「好き」は、感覚だけでなく、知識によって客観的に裏付けられているのです。
つまり知識とは、
- 物事の価値を判断するための「モノサシ」
- 良いものを「なぜ良いのか」と説明するための「言葉」
を与えてくれる、センスの源泉そのものなのです。
◆ 今日からできる、センスの磨き方
この本を読めば、センスとは天賦の才ではなく、日々の積み重ねで鍛えられる能力だと気づきます。
センスを磨くために必要なのは、常に学び、知識をアップデートし続けるというシンプルな姿勢です。
なぜこれが流行っているのか? なぜこのデザインは長く愛されているのか?
そんな疑問を持ち、その背景にある歴史や文脈を調べる。
良質なものに数多く触れ、自分の中に「普通」の基準点を着実に築き上げていく。
その地道なインプットの先にこそ、「センスが良い」と言われる自分への道が拓けているのです。
もしあなたが「自分にはセンスがない」と思い込んでいるのなら、ぜひこの本を手に取ってみてください。
センスは準備できる。その事実に、きっと勇気をもらえるはずです。


